雑動部活動日誌111〜120

■題  名:その111 隊員D      【2000年08月26日】


 ベンチに座っていたサチ隊長のもとへカズが歩いてきた。そして、少し離れてベンチに座った。

まさき 「やべ、全然会話が聞こえね〜よ。
    遠すぎるな。ちきしょう!」

 窓から30mほど離れていた。すでに窓は全開だ。

まさき 「もっと近付くか?」
オジサン「いや、それは危険だ。」
オバサン「外には隠れる場所が無い。」
お姉さん「ここが一番ののぞき窓よ。」
まさき 「悔しいな・・・」
隊員A 「そうだ、園子! あなた!」
隊員D 「ちょっと遠くて見づらいけど
(園子)やってみる・・・」
隊員BC「がんばって!」
一同  「なんだなんだ!?」

 隊員D(園子)は遠くの二人を凝視した。

園子:カズ「話ってなんですか?」
   サチ「あの日のこと・・・」
まさき 「な!? なんだ! 超能力か!?」
園子  「読唇術!」
一同  「はぁ!?」
隊員A 「園子、続けて!」
園子  「・・・」
オバサン「どうしたの? 見えないの!?」
園子  「いえ。二人とも黙ったままです。」

 なんかうさん臭い。本当かよ。

園子  「あ、しゃべり始めました。」
園子:カズ「あの時言ったとおりです。
     なにか気分を害したとか、悪くなった
     とかでしたら、謝ります。」
園子:サチ「いえ、違うの!」

まさき 「のぉ!?」
隊員達 「!?」
園子:サチ「あの封筒の中には
     あの手紙には・・・
     『好きです』と書いてあった。」
園子:カズ「ええ!? まさか。
     『お前なんか大嫌いだ』と書いて
     あったはずです!」
園子:サチ「本当はそうだったみたいね。」
園子:カズ「!? どういうことです?」
園子:サチ「君がいなくなった後、ピアノ教室に
     彼女、矢部さんが来てね。
      話してくれたの。手紙のこと。」
園子:カズ「!? どういうことなんですか!」
まさき 「どういうことなんだ!」
オジサン「お、いいね。」
オバサン「いい感じに盛り上がってきた!」
お姉さん「なんか話しズレてない?」
一同  「んで! 続きはっ!?
     園子さ〜ん!!」

 

■題  名:その112 七割五分?      【2000年08月27日】


サチ隊長「私が教室から帰ろうとすると
    彼女が入り口に立ってて、
    『さっきの手紙、アタシがすり替えて
     しまったので、本来入っているべき手紙
     を持ってきました。すみません。』
    と言ったの。」
かずお 「すり替えた!?」
サチ隊長「手紙には『お前なんか大嫌いだ』と
    書いてあった。
     そして、彼女、こう言ったの。
    『正直に言うと、アタシ、この出来事、
    よっしゃ、アタシがまとめてやるって
    楽しんでました。いたずら半分で、いや
    七割五分かな。ホントすみません。
     どうせ『好きです』なんて言えないだろ
    うと思って、本人は好きなのに。で、
    どちらかの手紙を渡すだけでいい。っていう
     計画を持ちかけて。両方に『好きです』
    って入れたんです。橘にわからないように。
     あいつ・・・アタシん家の近所で昔から
    知ってて、クラスも何度か同じになったり
    して・・・。で、何となく、あいつの性格
    だと『嫌い』の手紙を渡すだろうな。って
    予測して。でも、後でああすりゃよかった
    ってグジグジ後悔するんだろうなって…。
    そう思って。
     でも、あいつ、自分で全部、言ったし。
    この手紙必要なかったなって・・・。
    あいつ、いつの間にか、変わったというか、
    成長したなぁって・・・。
     忘れて下さいって、自分で言ったってことは、
     本心なのかなって。悩みぬいて決断したこと
     なのかなぁって。もうアタシが
    知ってる昔の橘ではないなぁって・・・。
    
       なら、この手紙はあいつが望んだ通りに、
    もとに戻すべきかなぁって。あとは、
    アタシでは無く、本人、運命に任せた方が
    いいのかなぁって。
      ・・・そう思いました。」』
かずお 「・・・・・」
サチ隊長「彼女、言い終わると走って帰ってしまって。
     彼女もしかしたら・・・」

まさき 「おいおいおいおい!!」
お姉さん「三角関係!?」
ゆういち「う〜ん、そう言われれば。」
オジサン「く〜うらやましい。」
オバサン「若いっていいわね。」
隊員達 「静かにっ!」

 

■題  名:その113 団長!?      【2000年08月28日】


かずお 「・・・ありえないです。」
サチ  「・・・そう。」
かずお 「・・・」
サチ  「君の中では、もう、このことは
    過去のことなんだ。」
かずお 「・・・ええ、まあ。」
サチ  「私、あれからいろんなことがあってね。
    那須さん、笠井さん・・・。
     いろんな人と出会って、いろんなこと
    教えてもらった。君のおかげ、時計の
    おかげだと思ってる。偶然かも知れ無いけど。
    すべていい方向、結果になって。
    とても、感謝してる。」
かずお 「笠井さんて・・・」
サチ  「用務員のおじさん。」
かずお 「い!?」
サチ  「知ってるの?」
かずお 「な、何度か会いました。」
サチ  「すごいでしょ! 団長!
    あ、私達、団長って呼んでるの。
    昔、小さなサーカス団の団長だったんだって。」
かずお 「い゛い゛!?」
サチ  「那須さんに呼び出されて、めちゃくちゃ
    になった所に、団長が現われて。
    間に入ってくれたの。ある勝負をして決着
    をつける。って提案して。那須さんも
    団長には恩があるみたいで素直に受け入れてね。」
かずお 「その勝負って?」
サチ  「ある地点からある地点まで先に着いた
    方の勝ち。っていう。」
かずお 「マラソン?」
サチ  「ははは。私も最初そう思った。でも、
    全く違うものだった。距離もすごいし。
    ルールも。」
かずお 「?」
サチ  「直線なの。
    途中にあるすべての障害は乗り越えていく。
    河も。山も。家も。ビルも。
    回り道は一切許されない。」
かずお 「!?」
サチ  「その日から団長、那須さん、私の3人
    での放課後訓練がはじまって。訓練よ。
     おかしいでしよ? 私も最初はそう思ってた。
    なんでこんなことしてるんだろうってね。
    この二人は何考えているんだろうって。
    でも、途中で投げ出すなんて悔しかったから
    最後まで続けてた。」
かずお 「・・・」
サチ  「結局、勝負は私勝てなかったけど、
    那須さんと仲良くなって。今になって
    続けてて良かったなぁって思うの。」

まさき 「君たちはこのこと知ってたの?」
隊員達 「公にはされてないが、一部の人は
    話しくらいなら知っているはずだ。
    直接見た人は極わずかだろうが。」

 

 

 

■題  名:その114 繋げる(つなげる)    【2000年08月29日】


サチ  「・・・」
かずお 「・・・」
園子  「沈黙です。長い沈黙です。」

サチ  「この町に越してきて半年、この間に起こったこと、
    全部、なんて言うか、新鮮で、楽しくて・・・。
    前の学校では、私、ただ
    何となく学校にいって、ただ何となく毎日を
    過ごしてた。ただ何となく生きてた。
     でも、越してきてから、変わった。
    自分でもわかるくらい。
     時々考えるの。これが全部、夢だったら、
    現実じゃなかったらって。そうすると、
    とても不安で、恐くて。
     どんなことがあっても失いたくない。
    そう思うの。」
かずお 「・・・」
サチ  「・・・」
かずお 「・・・」
サチ  「君に忘れてくれって言われて、私もそう
    しようと思った。でも、時が経つにつれて
    忘れられなくなって。
     君のこと忘れたら、時計のこと忘れたら、
    この半年の出来事すべて忘れてしまいそうで。
    すべて、消えてしまいそうで。ある朝、
    目が覚めたら、すべて夢だった・・・。
    そうなってしまう気がして。」
かずお 「・・・」
サチ  「どうしても忘れることが出来なかった。」
かずお 「・・・」
サチ  「・・・」
サチ  「・・・私、君のこと・・・」
かずお 「あのっ! 」
サチ  「・・・!?」
かずお 「・・・。
    そんな、無理に忘れようとしなくても。
    そんな悩む必要もないです。あの言葉は
    僕が僕自身に言い聞かせたんです。
    あなたが、悩まないでください。」

 カズがベンチから立ち上がった。

サチ  「・・・」
かずお 「もう過去のことです。人の思い出を
    どうこう言うつもりはありません。
    そんなに考え込まないでください。
    僕の言葉のせいで、ずっと悩ませて
    しまったようですね。すみません。」

 カズは足を踏み出した。

サチ  「あ、あなたは、もう、忘れたの?
    思い出にできたの?」
かずお 「・・・。
    難しいですね。今日、また、
    こうして再会してしまったし・・・。」
サチ  「・・・。
    半年前の君と、今日からの君、
    繋げてもいいかな?」
かずお 「!?
    言ってる意味が良くわからないん
    ですけど・・・。」
サチ  「半年前、好きでした。の気持ち。」
かずお 「!? さ、さあ。どうかなぁ・・・」

 カズは照れを隠すように歩きはじめた。
サチ隊長は少し微笑みながらベンチに座っていた。

 

■題  名:その115 昼食      【2000年08月31日】


まさき 「戻ってくるぞ。全員解散!
    散れ! 散れ!」

 オレ達は店内に散った。 戻ってきたカズはベンチに腰をおろした。 サチ隊長もしばらく戻ってくる様子はなく、オレ達 は訳もなく店内をうろつくしかなかった。  へとへとになるまで店内を歩きまわったころ、 バス乗車の案内アナウンスが流れ、オレ達はバス に乗り込んだ。オレ達がバスに乗り込んでしばらくすると、カズとサチ隊長がそれぞれ乗り込んできた。 オレ達がバスの後ろの方に固まっていたため、二人 は前の方の席に左右に分かれて別 々に座った。二人 は何一つ会話をせず、ただ窓の外を見ていた。
 バスが発車した後も二人は会話をすることはなか った。そして30分が経ち、バスは園内を回り終点に 到着した。オレ達はカズ、サチ隊長の二人が気にな って動物など全然見ていなかった。

坂井先生「おお、やっと来たか。」
小泉先生「どうだった?」
まさき 「う〜ん・・・」
ゆういち「どうだった、かな?」
サチ隊長「まあまあですね。」
かずお 「動物に活気がないっていうか。
    まあ、動物園ですからね。
    こんなもんでしょ。」
隊員達 「こ、こんなもんでしょ・・・」

 その後、遊園地の方へ移り、昼食タイムとなった。 先生二人、護衛隊、雑動部の3グループにわかれ、 それぞれ昼食をとった。カズ、ゆうちゃんは弁当を 持ってきていたが、オレは持ってきていなかったの で売店で焼そばを買った。

まさき 「・・・で・・・何だって?」

 しばらく沈黙が続いたが耐えきれなくなって、 オレはカズに話しかけた。

ゆういち「・・・告白?」
かずお 「いや、べつに。
    大したことじゃないよ・・・」
まさき「ウソつけ〜っ!! 大したことあるだろう!
    フザけろ!」
ゆういち「実際のところ! カズちゃん自身、
    どう思ってるの!」
かずお 「・・・」
まさき 「答えろ! 今はどう思ってるんだ!」
ゆういち「ねえ! どうなの!?」
かずお 「トイレ行ってくる。」
まさき 「おおおおおいっ!!」

 

■題  名:その116 自由行動      【2000年09月01日】


 実際の遠足では午後から遊園地内を自由行動という予定だ。しかし、雨天のため室内アトラクションが中心になる。まあ濡れてもかまわないというやつは、ジェットコースターなどに乗ってもいいんだろうが、かなり厳しいだろう。  でも、今日は晴天。思う存分楽しんでやる。

坂井先生「よし、午後3時に入り口の前の広場に集合!
     それまで自由時間だ!
    はい! 解散!
     あ、そうだ、土産買う時間も入れてだぞ。
    気をつけろぉ!」

 先生二人、護衛隊、雑動部の3グループに分かれ た。坂井先生、小泉先生は二人で歩いていくところ をみると、まあ、それなりに上手くいっているようだ。問題はカズとサチ隊長だが、今日は忘れることにした。人のことなど、もうどうでもいい。オレは 楽しむ。そう決めた。

まさき 「ゆうちゃん、カズ。まずはあれだろう?
    ジェットコースター。行こ行こ!」
まさき 「次はこれ! これ!
    今度はあれ・・・」

 楽しい時間というのはあっという間に過ぎる。 気がつくと、もう2時30分を回っていた。アトラクション制覇をとるか、お土産物色をとるか悩んでいると護衛隊の隊員の一人が、皆にわからないようにオレを手招きしているのに気付いた。オレはトイレに行くと言ってカズ達から離れた。

まさき 「なんすか?」
隊員  「ちょっと提案があるんだが。」
まさき 「提案?」
隊員  「やっぱ遊園地っていったら・・・。
    恋する二人って言ったら・・・
    最後はあれだろう?」
まさき 「あれ?」
隊員  「か、ん、ら、ん、しゃ!」
まさき 「観覧車!」
隊員  「二人を乗せようと思うんだが。」
まさき 「いいんじゃないすか。」
隊員  「ただ、普通には乗らないと思うんだ。」
まさき 「なるほど。」
隊員  「そこでだ・・・」
まさき 「はい。了解いたしました!」
隊員  「では、解散!」

 オレはカズ、ゆうちゃんのところへ戻り二人を 観覧車へと誘った。  護衛隊もすでに来て隊長を最後に一列に並んで いた。オレ達はその後に、オレ、ゆうちゃん、 カズの順で並んだ。オレはゆうちゃんにこっそりと話しかけた。

まさき 「これ、4人乗りだから、サチ隊長が
    一人残るんだ。で、次のやつに隊長が
    一人で乗り込んだら、そこにカズを
    押し込んで扉しめるから!
    オッケー?」
ゆういち「オッケー!」

 

■題  名:その117 観覧車      【2000年09月02日】


 順番が回ってきた。隊員4人が乗り込む。
「おい、私一人で乗るのか?」と言いたげな 隊長を残し、笑顔で手を振る隊員達。

係員  「次は、お一人ですか?」
サチ隊長「は、はい。」
まさき 「いいえ! こいつもです!」

 オレとゆうちゃんはカズをゴンドラの中へ 投げ込んだ。

ゆういち「いってらっしゃ〜い!」
まさき 「お楽しみを!」

 続いてオレとゆうちゃんも観覧車に乗った。
 カズとサチ隊長がどんな会話をしていたか、 誰にもわからない。もしかしたらずっと黙ったままだったかも知れない。窓の外をずっと眺めたまま。でも、それはそれでいいんじゃない。と ゆうちゃんは言った。

ゆういち「心で会話してるよ。きっと。」
まさき 「くぅ。詩人だね〜。」
まさき 「ところで、なんで観覧車ってあるんだろう。
    遊園地に。確かに乗り物だけど
    別に眺めがいいだけで楽しくないじゃん。
    カップルのため?」
ゆういち「楽しいか楽しくないかは人それぞれ
    なんじゃない。前に誰かに聞いたんだけど、
    なんか年齢を重ねた分だけ観覧車が
    乗りたくなるとか。」
まさき 「!? 他のは疲れるから?」
ゆういち「いや、そうじゃなくて・・・」

 否応なく動き続ける観覧車。一周するまでの ポッカリと空いた人生の時間。つい物思いにふけってしまう。一面 に広がる大空が。眼下に広がる大地が。人の心を揺さぶるに違いない。幼いころ の思い出や、昔の恋の出来事が、取るに足らない 記憶など、頭や胸を駆け巡り、自分が今どこに いるのか、なにをしているのか忘れさせてくれる。 この小さなゴンドラの空間がとても居心地よくて 何周でもしたくなる。何日でも。何年でも。 ゆうちゃんはそんなようなことを言っていた。

ゆういち「夕焼け空だったらきれいだったろうな。」


坂井先生「ようし! 全員揃ったな? 撤収!」

 オレ達は白猫サファリパークを後にした。

まさき 「なんか忘れてるような気がすんだよな。」
かずお 「お土産か?」
まさき 「いや、それは絶対忘れないって。」

 オレ達を乗せたバスは走ってゆく。

まさき 「あ! 時計だ! そのままだ!」

 バスはもう戻らない。

まさき 「まあ、いっか。」

 

■題  名:その118 1000円?      【2000年09月03日】


 帰りの電車はすいていて、みんな座ることが出来た。始めはあそこが面白かったとか、つまらなかったとか話していたが、電車をいくつか乗り換え、 最後の線の電車に腰を下ろすとみんなウトウトと居眠りをしていた。 オレもその中のひとりだった。 が、まぶたの上から何か光るのを感じて目を開けた。

ゆういち「あ、ごめん。起こしちゃった?」

 ゆうちゃんがカメラを向けていた。

まさき 「!? やめろよ! 撮るな!」
ゆういち「いや、一応記念だから・・・。」
まさき 「他の奴、撮れよ!」

 気付くと空がオレンジ色に染まり、夕日が車内を 染めていた。そして窓の外に広がる町並も。瓦や ガラスがキラキラと光って追いかけてくる。一発で 眠気が吹き飛ぶほどの光景だ。  周りを見るとみんな寝ていた。乗客は椅子が あちこちまばらにあいている程度だ。その乗客達も 静かに窓の外を眺めていた。

まさき 「もうすぐだよな? 駅?」
ゆういち「うん。」
まさき 「こんな景色が見れる場所があったなんて
    知らなかったよ。電車でこっち来ないし。
    写真撮った?」
ゆういち「もちろん!」
まさき 「あ、もしかして朝からずっと撮ってた?
    気付かなかったたけど。」
ゆういち「うん。ずうっとね。」
まさき 「じゃあ、2ショットは?」
ゆういち「は?」
まさき 「カズと隊長。坂井先生と小泉先生。」
ゆういち「う〜ん。一緒には映ってるけど、仲良く
    ってのは無いかな。」

 先生二人を見ると、小泉先生の頭がコクリコクリ と坂井先生の肩につきそうでつかない。そんな状態 が続いている。カズと隊長は離れて座っていて、 そんなシャッターチャンスはありそうに無い。カズ は明らかに眠っているが、隊長は今にも目を開けそうな感じだ。オレは坂井先生をそっと起こした。

まさき 「オオ、お客サン、写真イカガ?
    今ナラ、1000円デ、ベリーグッドナ
    写真トレルヨ!」
坂井先生「どういうことだ?」
まさき 「モウ少シ近付イテ、肩モット高クネ。
    ソシタラ、アナタ達、ドコカラ見テモ、
    恋人ドウシ! 今ガ、チャンスネ!
    モウコンナチャンス、二度ト、ナイネ!」
坂井先生「1000円か・・・
    よし、撮ってくれ!」
まさき 「マイドアリ!」
ゆういち「・・・」

 

■題  名:その119 感想文!?      【2000年09月04日】


 学校に着いた時には、辺りは暗くなっていた。

坂井先生「みんな御苦労さん。気を付けて帰るように。
     あとで感想文提出なんて言わない
    から安心するように。では、また明日。」
小泉先生「さようなら。」
一同  「さようならぁ。」

 みんなはそれぞれ帰って行った。
坂井先生は小泉選先生に家まで送りますと言って いたが断られていた。

まさき 「オレ達も帰ろうぜ。」

 と、ふと校庭を見ると誰かがいる。 何か袋をぶら下げて、校舎の方へ歩いて行く。 コンビニの袋か?

まさき 「笠井さんだ!
    今日の話ってホントなのかな? 団長?」
ゆういち「聞いてみようか?」
かずお 「・・・」
まさき 「聞いてみよう。」
かずお 「ちょっとまて。その話って何だよ。
    なんで知ってんだよ。」

 オレは振り返らずに走り続けた。

まさき 「笠井さん何してるんですか?」
笠井さん「おお、君は、たしか坂井先生といた。」
まさき 「松室です。」
笠井さん「いや、明日から学校に来ようと思ってね。
    ちょっと様子を見に来たんだ。」
まさき 「ちょっと笠井さんに聞きたいことが
    あるんですけど。」
笠井さん「聞きたいこと?」
まさき 「笠井さんって、昔、サーカスの
    団長だったんですか?」
笠井さん「お!? 誰から聞いたんだい?」
まさき 「サチ隊長。桜田幸子さんです。」
笠井さん「・・・そうか。」
まさき 「その決闘!?についても詳しく
    聞きたいんですけど。」」
笠井さん「ははは。」

 笠井さんはオレ達を用務員室へ招いた。 その部屋は六畳くらいの畳の部屋で小さなちゃぶ台 が真ん中に置いてあった。笠井さんはその上に コンビニの袋を置いた。中身は缶 ビールのようだ。 笠井さんは冷蔵庫から麦茶を取り出し、オレ達に 出してくれた。

笠井さん「えっと、何だっけかな?」
まさき 「団長です!」

 

■題  名:その120 用務員室      【2000年09月05日】


 プシュ。ゴクゴク。ゴト。

笠井さん「プハー。」

 笠井さんは缶ビール開けて飲んだ。 オレ達も麦茶に手を伸ばした。

まさき 「いただきます。」
かずお 「ん!?」
ゆういち「う・・・!?」
まさき 「ブッ!! こ、これ・・・」

 その麦茶は変な味がした。というか腐ってるんじゃないのか? あらためてよく見るとちょっと濁っている。

笠井さん「お、もうダメか?
      休む前に作ったやつだからな。
    当たり前か。あはははは!」

 笠井さんはここに来る前から少し飲んでいたのか、すでに酔っているようだった。そして、 その場に寝転んでしまった。

まさき 「そう言えば、休んでた原因て
    なんだったんですか?」
笠井さん「・・・」
まさき 「あの〜・・・」

 笠井さんは数秒おいて答えた。

笠井さん「今日はもう遅いから、帰りなさい。
    話はまた今度だ。」
まさき 「ええ!? 教えて下さいよ!?」

 身を乗り出してさらに質問しようとしたところ をカズ、ゆうちゃんが「また今度にしよ」と、 オレを止めた。

かずお 「それじゃ失礼します。」
ゆういち「さようなら。」

 何かマズイこと聞いちゃったかな? と思いながら靴を履き、戸を開けた時、ちゃぶ台の向うで 寝転がっている笠井さんがしゃべりだした。

笠井さん「別に焦ることは無い。時間はたっぷりある。
     この学校での物語りは始まったばかリだ。
     よくこんなことをいう。
    『ずっと続くと思っていた。』、
    『いつか終わりが来るなんて考えてもいなかった。』。
     卒業する者、去って行く者が皆、思うことだ。
     お前達もすでに何度か感じたことかも知れない。

     でも、忘れなさい。考えるのはよしなさい。
     いつか来る別れなんて。
    やがて来る悲しみなんて。
     そんなもの、楽しい思いでにはかなわないから。
     だから、楽しい思い出をたくさん作りなさい。
     血湧き肉踊るような体験をしなさい。
     いつも笑っていられるように。
     悲しみの最中にも、思い出し笑いを
     してしまうような・・・。
     そんな思い出を、この学校で作れるように。

     雑動部の諸君、頑張りたまえ。
     また、いつでもここに来るがいい。」

 酔ってるのか、本気なのかよくわからなかった。 オレ達は軽く会釈して部屋を出た。

まさき 「なんか語ってたぞ。」
かずお 「酔ってんだよ。」
ゆういち「いや、本気だよ。深いもん。」
まさき 「それよりさ、ちょっと口直しになんか
    飲もうぜ。喫茶風川あたりで。」
ゆういち「いいね!」
かずお 「補導されるぞ。」
まさき 「大丈夫だよ。私服だし。
    カズのおごりでな。」
かずお 「何でだよ」
まさき 「今日、お前が一番おいしい思いした
    んだから!」
ゆういち「そうそう! で、どうなの?」
かずお 「オレ帰るわ・・・。」
まさき 「逃がさ〜ん!」

 空には星が見えていた。

 

この日記に登場する人物、団体、事件等は、すべて架空のものです。
なお【00年00月00日】とは作者の書いた日付けで、
作品中の日付けとは関係ありません。

 

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