雑動部活動日誌31〜40

■題  名:その31 バナナパフェ       【2000年06月03日】

 

 ひたすらバナナパフェを食べ続け、なかなか話の 続きをしない笠井さん。先生も黙ったままだ。  カズはオレの方を向いてしきりに目で合図をする。 どうやら先生に「謝れ」「今だ」という合図を送れ ! と言いたいようだ。しかし先生はテーブルの端を見 つめたままでこっちを全く見ていない。
 オレはカズに「だめだ。どうしよ。」と顔で合図。
カズはオレに「なんとかしろ!」と目で合図。
ゆうちゃんは「腹減った〜」と腹で合図!?。
 そんなことしてるうちに笠井さんはバナナパフェ を食べ終えて、
「ゴトッ」っとパフェの器をテーブ ルに置いた。

笠井さん「それで・・・」

 笠井さんが話し始めようとした時、 突然、坂井先生が立ち上がった。

坂井先生「申し訳ございませんでした。
    失礼なことを言ってしまいまして。
     ・・・私も同じことをしたと思います。
    あの場にいたら。
     ただ、私も思っていたことをズバリ
    言われて・・・。
     ほんとにすみませんでした。
     ですからどうか辞めないでください。
    また学校に戻ってください。
    お願いします。
    このとうりです。」

 坂井先生はずっと頭を下げたまま謝った。

まさき
かずお 「お願いします。」
ゆういち

 オレ達も立ち上がり頭を下げた。
まさき 「あなたが辞めちゃったら、あなたがいなくなったら、
    その卒業生がいつか訪ねてきたときどうするんですか!
     悲しむじゃないですか!」

 オレは、こう言えば効くだろうと 考えておいた言葉を大声で言った。  オレはカズに「これ、どう?」と合図を送ったが、カズは答えず目線をそらした。
 オレ達は笠井さんの言葉を待った。

 

■題  名:その32 原因            【2000年06月04日】

 

笠井さん「まあ、座ってくれ。ほら。 座れ。」

 笠井さんはオレ達を座らせると身を震わせて
泣きだした・・・いや、笑い出した。

笠井さん「はははははははは。 原因は坂井先生と?
     ははははははは。 違いますよ。全然。
    他の理由です。ほかの。
     まぁ、確かにちょっとムッとしたが。
     小暮先生は何て?」

坂井先生「小暮先生は・・・
     『君のせいだぞ。』って・・・。」
笠井さん「ははははは。なるほど。
    それで、先日連絡した時、小暮先生、
     『用務をやりたいっていう教員がいるから、
     こちらは心配しないでください。
      ゆっくり休んでください』
    と言っていたのか。ははははは。」
坂井先生「・・・。
    私と会わなかったのはなぜです?」
笠井さん「う〜ん。いろいろとな。考えることが
    あってな・・・。
     ところで君たちは?
    坂井先生クラスの生徒か?」
まさき 「ぼくはそうですけど・・・。
    正確にはぼくらの部、雑動部の顧問でして・・・。」
笠井さん「ざつどうぶ!?」
まさき 「あなたが戻ってこないと、その仕事、
    僕らがやらないといけないんです。」
かずお 「だから、戻って下さい!」
ゆういち「お願いします!」

 

■題  名:その33 廃部か…          【2000年06月05日】

笠井さん「・・・。
    う〜ん。悪いんだが君たちには
    もう少しの間、頑張ってもらおうかな。
    ・・・うん。
     ちょっとトイレ・・・」

 笠井さんは立ち上がるとゆっくりと歩いていった。
やっぱり決心はかわらないかぁ〜とオレはため息をつき、 明日からの過密スケジュールを考えると、「廃部」の文字が頭に浮かんできた。

かずお 「・・・もうすこしってどういうこと!?」

 オレ達はうつむいて黙っていたが、カズがそう聞いたのでオレは「さぁ」と首をかしげた。 そして、ふと振り返ってみると、

まさき 「ああっ!!」

 笠井さんは店を出ようとしている!
オレ達は一斉に立ち上がり追いかけようとした時、 笑顔でこう言った、

笠井さん「来週の頭には学校にもどる・・・。
    おそらく。
     だから、それまで迷惑をかけるがよろしくたのむ。
     ・・・それじゃ、会計よろしく。」

坂井先生「な、なぜ、逃げたんです。
    わたしからっ!!」
笠井さん「あんただからってわけじゃないさ。
    ただ、誰とも合いたくなかっただけ。
    だれとも話したくなかっただけさ。
     ・・・一人になりたかっただけだ。」

 笠井さんは一瞬悲しそうな顔をすると、駆け足 で店を出ると町並みに消えていった。オレ達はその表情におどろいて立ったまま動けなかった。

店員  「おまたせいたしました。
    カツサンド。スパゲティナポリタン。
    ビーフカレー。チョコレートパフェ。
    でございます・・・。
     どうしましたお客さん。
    みんなで立ち上がって・・・。」
坂井先生「い、いえ。なんでも。」

 オレ達は静かに腰をおろし窓の外を見た。
空はオレンジ色に染まっていた。

 

■題  名:その34 …いいにおい        【2000年06月06日】


まさき 「原因て・・・何だったんですかね。」
坂井先生「・・・・・・やっぱり、私だろ。
    気ィ使っていってくれたんだよ・・・。」
ゆういち「とても悲しそうな顔だったね。
    ・・・怒ってるようには見えなかったけど・・・。」
かずお 「やっぱり他に原因があるはず。
    もっと重大な・・・」
まさき 「・・・。ま、まぁ、いいじゃん。 とりあえず。
     来週には来るって言ったんだから。」
一同  「・・・・・・」
店員  「どうしました? お客さま。
     冷めてしまいますよ。」

 出された料理に手をつけないのを不思議がって 店員が様子を見にきた。気付けばいいにおいが辺りに漂っている。オレとゆうちゃんは慌てて食べはじめた。

店員  「・・・そういえば、
    笠やんの息子夫婦、どうなりました?」
一同  「・・・!?
    なんのことです?」
店員  「え!?  聞いてない?
    しまった!
       いまのは聞かなかった・・・
    ということで。」

 店員は奥へ逃げていった。

坂井先生「ちょ、ちょっと!
    どういうことです! 教えて下さい!」

 店員は奥へ入ったっきり出てこなかった。

 

■題  名:その35 あのやろう…       【2000年06月07日】


 ガタッ!!
 坂井先生は急に立ち上がった。 テーブルが揺れて倒れそうになったコーヒーカップ やコップをオレ達3人は慌てて押さえた。 先生の顔を見上げると眉間にしわをよせ、唇をかんでいる。

まさき 「ど、どうしたんですか?」
坂井先生「・・・学校戻るわ・・・。」

 そう言うと先生はスタスタと店を出て行って しまった。

まさき 「どうしたんだ。」
ゆういち「小暮先生じゃない? 聞きに。」
まさき 「あ〜、なるほど。」
かずお 「・・・んじゃ。おれも帰るわ。」
まさき 「お、おぉ。じゃあな。
    ・・・ふぅ。
    これからどうなるんだ〜。雑動部。
    ああっ!!
    カズ!! かねっ!! 金っ!!
    金払え〜!!」

 カズはすでにドアを開けていて、満面の笑みを浮かべるとダッシュで走り去った。

まさき 「あのやろう。
    じゃ、ゆうちゃん、こうしよう。
    最後まで食ってた方が金払う!
    よーい、ど・・・
     って、おおお〜い!
    もう、食い終ってんじゃん!!」
ゆういち「ごちそうさま。
    それじゃ、またあした。」

 ゆうちゃんは腹をさすりながら店を出ていった。 オレはいい具合に冷めたカツサンドを一人で寂しく 味わった。

店員  「え〜、あわせて、3900円。
    消費税込みで、4095円になります。」
まさき 「い゛い゛〜っ!!!」

 そのころ先生は学校に戻っていた。

坂井先生「小暮先生はどちらいらっしゃいます?」
    「あ、なんか、研修だとかでさっき
    出かけましたよ。二三日戻らないって。」
坂井先生「あのやろう・・・。」

 

■題  名:その36 あのひと          【2000年06月08日】


 校庭のすみにある物置き。
高さ2E、幅3m、奥行き1.5m。 黒と黄色のロープ、竹ぼうき、熊手、雪掻き用の スコップ、石灰のライン引き・・・。そこには これといって特別なものは入っていない。 ただひとつ、壁に突き刺さったテニスラケットを 除いては・・・。

まさき 「ちっ。なんだよこれ。」

 オレは石灰が雨に濡れないように穴を塞いで おいてくれと坂井先生に頼まれた。錆びてもろくなった所にたまたまラケットが当たったようだ。テニスコートからは随分離れている。

まさき 「どうやったらこうなるんだよ。」

 オレは適当な大きさのアクリル版をゴミ捨て場から拾ってきてボンドで 張り付け終わりにした。さぁて帰ろうか、と振り返った時、

    「あぁ!!」
まさき 「ん?。  痛っ!!」

 サッカーボールがオレの顔面を直撃した!
オレがその場にうずくまっていると、誰か近付 いてきた。

男子生徒「ごめんごめん。だいじょうぶ?」

 この男、オールシーズンスポーツ部のやつだ!

まさき 「ああ! あの時の人!」
男子生徒「え? だれだっけ?」

 まぁ覚えてはいないだろうとは思っていた。 むかつくっ。この部の奴らはみんなこんなんなのか?  そこでオレは部長がどんな人なのか知りたくなった。

まさき 「部長さんてどの人ですか?」

 

■題  名:その37 オースポ部長       【2000年06月12日】


男子生徒「え? 部長?
     オールシーズンスポーツ部の?
    え〜と、あの方なら、ほら、あそこ。」

 そう言って彼は腕で方向を差した。 あの方(かた)って何それ?  オレはその方向に目を向けた。

まさき 「ん〜ん?」

 見るとサッカーグランドの向こう側に人だかりが出来ていて、女子生徒が5人ほど集り、何か キーキーとしゃべっている。さらによく見ると中心に誰かいるようだ。 椅子に座っている男・・・。

まさき 「あの、椅子に座ってるのが部長ですか?」
男子生徒「そう。あの方が部長です。」
まさき 「まわりの人は何ですか?」
男子生徒「あぁ。ファンクラブの会員です。」
まさき 「ファンクラブ!?」
男子生徒「そうです。この学校一の美少年。
    なおかつ生徒会長ですから。」
まさき 「はぁ・・・。
    そういえば、なんで椅子にすわってるんですか?」
男子生徒「生徒会長ですから。」
まさき 「・・・。
    なんでみんなジャージなのに、
     あの人だけ制服なんですか?」
男子生徒「生徒会長ですから・・・。」

 と、そのとき、部長で生徒会長の彼がこっちに手を振っているのが見えた。オレは後ろを見たが誰もいない。この隣にいる部員に手を振っているようだ。

まさき 「ん!? こっち歩いてくるぞ!」

 

■題  名:その38 スマッシュ       【2000年06月10日】


 オールシーズンスポーツ部部長がこっちへ歩い てくる。
ファンクラブの会員もあとに続いてゾロゾロと。そのうちの二人が部長の座っていた椅子を取り合っている。

オースポ
 部長 「やぁ、小島君。御苦労さま。
    最近忙しくって部の方、任せっきりで申し訳ない。
     これからもよろしくね。」
男子生徒 (小島)「いえ、とんでもございません。
    光栄です。」
オースポ
 部長 「それで小島君。そちらの方は?」
まさき 「あ、オレ、僕は、松室といいます。」
 部長 「じゃテニス部・・・おや?」
まさき 「いえ、雑動部といいまして・・・?」

 オースポ部長はオレの持っていたラケットを手にとってジッと見つめた。

 部長 「これは私が無くしたラケット。
    君、これをどこで?
    ああ。なるほど。倉庫に。
    二三日前、部でテニスをやった時、
    こう、スマッシュってやった時に
    どこかへいってしまってね〜。
    いや。探してたんだよ。ありがと。 うんうん。
    で、何部って言いましたっけ?」

 あんたがやったのか! 倉庫の穴は! こんだけ コートから離れてたらそりゃ見つけられないわ。

まさき 「雑動部です!」

 

■題  名:その39 便利屋?        【2000年06月11日】


 このオースポ部長、確かにいい顔をしている。
想像していたキザっぽさや、イヤミな感じは無か った。
どちらかというと、のほほ〜んとした優しそうな人だ。

オースポ
 部長 「ざつどうぶ? はて?
    そんな部あったかな。」
まさき 「はい、先日新しくできまして。」
部長  「ほぉ。内容は?」

 オレは答えに困った。この部と同じとも言えないし、
ましてやこの部に対抗してつくったともいえない。雑用ともいえない。雑動部部長のプライド的に。

まさき 「えっと、あの。いろいろ。やります。
    その〜、御依頼があれば、というか、
    言いつけられれば・・・」
部長  「・・・何でも屋ってこと? 便利屋?
     人数足りないから試合でてくれとか、
    舞台装飾、手伝ってとか?」
まさき 「えぇ、まぁ。
    (そういうことにしておこう・・・)」
部長  「へ〜なるほど。
    学校もここまできたか、って感じだね。はは。
     あ そうだ、そうだ
    さっそくで悪いんだけど、ちょっと依頼
    したいことがあって。
     探し物なんだけど。サッカーシューズ。
    いや、さっきサッカーでシュートした時、
    どこかへいってしまってね。
     あれはやっと見つけたお気に入りの
    シューズなんで。ぜひ、お願いしたい。
     もちろん、お礼はします。」

まさき 「お、お礼・・・。
    はい! よろこんでお受け致します!」

 

■題  名:その40 涼眞!!        【2000年06月12日】


オースポ
 部長 「ほんとに? ありがとう。
    いや、助かった。君がいて。
     私よくモノを無くすんだ。
    これからも時々頼むかも知れないんで、
    よろしくたのみます。
     それじゃ、小島君。あとよろしくね。
    これから、会議があるんで。失礼します。」

 そう言うと校舎の中へ入っていった。 そのあとをファンクラブの会員たちも追っていく。 オレにガンを飛ばしながら・・・。気軽に話てんじゃないわよ! じゃましないで! といわんばかりに・・・。

まさき 「こじま先輩・・・でしたっけ?
    小島先輩は副部長かなにかですか?」
小島先輩「一応ね。」
まさき 「あの人、名前何ていうんですか?」
小島先輩「神宮 涼眞(じんぐう りょうま)」
まさき 「なんか、優しそうひとですね。
    入部の面接ってあの人がするんですか?」
小島先輩「あ、君、受けたの?」
まさき 「いえ、受けてはいないんですけど、
    落ちるからやめとけって・・・。」
小島先輩「・・・一応部長ってことになってるけど、
     事実上はファンクラブ会長が
    決めてるらしいよ。ここだけの話!」
まさき 「・・・なるほど。」

 小島先輩は小声でそう言うとサッカーグランドに 戻っていった。そして一言付け足した。

小島先輩「部長の探し物。気をつけろよ!
    マジで・・・。」
まさき 「は、はい。・・・!?」

 どういうこと?

 

この日記に登場する人物、団体、事件等は、すべて架空のものです。
なお「書いた日」とは作者の書いた日付けで、
作品中の日付けとは関係ありません。

 

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