雑動部活動日誌41〜50

■題  名:その41 活動方針         【2000年06月13日】


 「お礼」「便利屋」か。
そういう儲け方があるのか。 いや経営か。いやいや活動だ。
昨日オースポ部部長に言われて、何か、 希望が見えてきたような気がした。 中学生の3年間、みんなが青春の汗を流している ときに、
みんなが青春を謳歌しているときに、
このオレは、労働の汗、タダ働き・・・。
 まぁ、やめればいいんだけど・・・。
そんな時に、この話。うん、おいしい。
オレは今日一日中笑っていたらしい。
帰りの学活のとき隣の席の人に言われた。

同級生 「おまえ、ずっとほくそ笑んでたな。
    3時限目の数学の先生、お前のこと
    じっと見て、首かしげてたぞ・・・。」

 放課後、オレは坂井先生のところへ行った。

まさき 「先生、提案があるんですけど!
    雑動部の活動方針について。」

 オレは説明した。
しかし! 金品を贈ること貰うこと、それは出来ないらしい・・・。
なぜなら、学校だから。ちっ!

まさき 「でも、何も貰わないんじゃ意味ない
    じゃないですか!」
坂井先生「何か貰うために部に入るのか?
    金を貰うために部活をするのか?
    違うだろう!
       経験や、思い出、人間関係、
    金にはかえられない何か!
    それを得ることに意味があるんだ!!」

 熱血教師を目覚めさせてしまった!?

 

■題  名:その42 無償の愛         【2000年06月14日】


坂井先生「善行に見返りを期待するな!
    わけへだてのない無償の愛!
    それが人間だぁ〜!!
     わかったかっ!」

 先生は言い終わると職員室を出ていってしまった。
オレはひとり突っ立ったまま取り残された。

まさき 「なんかすっげ〜凹む。
    あんな怒らなくても・・・。」

 そこへ近くの机にいた別の先生が歩いてきた。

先生A 「君、なにかやらかしたのか?」
まさき 「いえ。なにも。まだ。」
先生A 「気にするな。坂井先生、最近機嫌が悪いんだ。
     なんか、小暮先生にダマされたとか、
     まだ帰ってこない、とかで・・・」
先生B 「いやいや、原因は他のことらしいですよ。」

 また別の先生が来た。

先生B 「小泉先生が原因だとか・・・。」
まさき
先生A 「!? どういうことです!」
先生B 「なんでも坂井先生が小泉先・・・」

 話が途切れたので変だなと思って周りを見渡すと・・・いた!。
坂井先生が入り口で 覗いている。ほかの先生達はそそくさと散っていってしまった。坂井先生はオレに手招きをはじめた・・・。 また説教かぁ、と仕方なく寄っていくと、

坂井先生「ちょっと頼みがあるんだけどな・・・。
    雑動部への依頼として。早速だけど。
     小泉先生についてなんだよな・・・。
    ちゃんとお礼はするからさ!
     なんかおごるからさ! な!」

   それはいいのかっ!

 

■題  名:その43 立ち読み         【2000年06月15日】


 先生の依頼とは・・・。
昨日の夕方、小泉先生と一緒に歩いていた男は誰なのか!
 本人に・・・それとなく・・・聞くこと。
 なんでも昨日坂井先生が本屋で立ち読みをしていたら、
美しい声が聞こえた!?…らしい。
見ると、小泉先生ではないか! 声をかけようと読んでいた本を投げ捨てたその時、 見知らぬ男が小泉先生に走りより、いきなり
「ひざカックン!」
小泉先生はその場にひざまついた。
 なにしやがるんだ〜!! っと、坂井先生は指をさし腹をかかえて笑っているその男に向かっていった。
 が、小泉先生は急に立ち上がると、クルっと向きをかえ走り出し、坂井先生とぶつかってしま った!  二人は、小泉先生がおおいかぶさるように倒れ こんだ。

小泉先生「さ、坂井先生!?・・・」
坂井先生「ど、どうも、こんばんわ・・・」

 小泉先生はそそくさと立ち上がると、 一言いって、目を合わせることなくそのまま 走り去ってしまった。

小泉先生「すみません!!」
男   「おい! まてよ! おーい!」

 その男も後を追って走っていった。
うれしいような、かなしいような・・・。
坂井先生は歩道に寝そべったまま、しばらくボーっとしていた。

まさき 「自分で聞けばいいじゃないですか!」
坂井先生「オレだと、話しづらいだろ。聞け!」

 この学校には音楽室が旧校舎と新校舎にあり、 小泉先生がよくつかうのは旧校舎の音楽室だ。
  オレは無理矢理、連れてこられた。

 

 

■題  名:その44 不自然!?        【2000年06月16日】


 オレは音楽室の戸を少し開けて覗いてみる。
 おお、あれがこの学校、独身野郎教師どもの
憧れの的っ、小泉先生っ!!
 ピアノの練習をしている。

まさき 「オレが聞くんスか?」
坂井先生「早くしろ! 生徒が来ちまう。」
まさき 「なんて言うんスか?」
坂井先生「なんでもいいから!
      わからないことがあるとか言って。」
まさき 「でも、オレの音楽の授業の先生、
    別の先生だぜ?」
坂井先生「え!? うそ?」
まさき 「先生、オレの担任だろ〜!」

 そう、オレの音楽の先生はちょっとお年を召した・・・ベテラン女性教師だ。

坂井先生「か、かまわん・・・この際。」
まさき 「それこそ不自然じゃないですか!」
坂井先生「う〜ん。じゃ、入部したいって言おう。
    吹奏楽部! なんなら合唱部でもいいぞ」
まさき 「ちょっと〜、なんスかそれ〜。」
坂井先生「いいじゃないか。雑動部だろ?
    なんでもやるんだろ! 便利屋なんだろ!
     これは依頼であって、仕事なんだぞ!」
まさき 「・・・はぁ!? 仕事?
    オレは引き受けるとは言ってな・・・」
ゆういち「なにやってんの?
    まむー?」
まさき
坂井先生「い゛い゛っっ!!!!!
    な、なんで!
    おまえが! こんなとこにっ!!」
ゆういち「いや、ちょっと写真部で
    小泉先生に聞くことがあって。
     まむー達は?」
まさき 「い、いや、オ、オレも聞くことが
    あって。ね? 先生?」
坂井先生「お、おう。」
ゆういち「じゃ、申し訳ないんですけど急ぎなんで、
     お先にいいですか?」
坂井先生「お、おぅ。」

 ゆうちゃんは音楽室に入っていくと、
小泉先生と自然に! 話し始めた・・・。

 

■題  名:その45 ガクガク         【2000年06月17日】


 小泉先生とゆうちゃんは時々笑ったりしながら
楽しそうに話をしている。ゆうちゃんはピアノの
上にアルバムを開き、一枚一枚写真を説明しているようだ。

坂井先生「どういうことなんだよ!松室っ!」
まさき 「知らないッスよ!」

 オレ達は二人の一挙手一投足をジッと見つめていた。
いや、のぞいていた。不自然な体勢で。

坂井先生「いつまで話してんだ? あいつ。」
まさき 「あ、なんかオレ、
    足、ガクガクしてきた・・・。」

 すでに5分近くが経過している。

まさき 「あ、ダメだ、ちょっと休憩!
    ふくらはぎツリそう!」

 オレは戸から離れ廊下に腰をおろそうと、後ろを見ると、

まさき 「うおっ!?」

 女子生徒が二人、立ち尽くしているではないか!
オレは坂井先生の足をたたいて知らせた。

まさき 「(先生! 坂井先生!!)」
坂井先生「ぬなっ! か、かか。
    あ、いや、ちょっと、用があって、
    音楽室に。で、誰かいるかな〜って、
    ははははは・・・」

 女子生徒は無表情のまま黙っている。 オレ達が「覗いていた」のを明らかに見てるはずだ。 どうやってこの場をおさめるか。
オレ達は必死で考えたが、出るのは冷や汗だけだ。

ゆういち「あ、先生、お待たせしました。
    話終ったんでどうぞ。ん?」
坂井先生「お、おう。終ったか。そうか。
    御苦労、御苦労。じゃ、もどろう。うん。
    いっしょに。さ、ささ。
    ほら、松室! いくぞ!」

 オレと先生はゆうちゃんを見てたんだ!と言わん
ばかりにゆうちゃんの手を引っ張って足早にその場を去った。
廊下の角をまがると、オレと先生は座り込んだ。

まさき  坂井先生「助かった・・・・」

 

■題  名:その46 アイアイサッ       【2000年06月18日】


ゆういち「どうしたんですか? 先生? まむーも。」
坂井先生「い、いや、何でもない。なんでも…」
ゆういち「・・・それじゃ、僕、写真部に戻ります。」

 ゆうちゃんは首をかしげながら戻っていった。

坂井先生「・・・おい! 松室!」
まさき 「は!? なんです?」

 坂井先生は立ち上がると、追え! っと首を振った。
オレも立ち上がり敬礼をする。

坂井先生「10分後に職員室。いいな。」
まさき 「アイアイサッ!」

 オレはゆうちゃんを追いかけた。

まさき 「なにぃっ!! 結婚っ!!!
    小泉先生が!! 相手は誰だ!!」
ゆういち「ち・が・うっ! 弟さんがっ!」
まさき 「弟とかっ!! 」
ゆういち「だから、ちがうって!」

 オレはすぐに追いつき何をしていたのか聞いた。
 アルバムの写真は小泉先生と弟さんを撮った写真 らしい。先日の放課後、写 真部の部員達が校外で 撮影をしていると、二人が通りかかった。  どう見ても恋人どうしっぽく、そのまま見てみぬ ふりをするかどうか迷ったが、聞いてみると弟さんだった。弟さんはもうすぐ結婚するらしく、 「もう滅多に来れなくなるから」ということで、 二三日前から先生のうちに遊びにきているとのことだった。  姉の学校の生徒だと知ると弟さんは言った。 「写真撮ってくれよ、独身最後の思いでに!」 こうして、小泉先生はあまり乗り気ではなかったが 写真部部員は二人の写真を撮ったのだ。  その写真が出来上がったので見せに来たのだ。

まさき 「ちょっと、それ、見せてくれよ。」
ゆういち「だめ! 誰にもみせないでって
    言われてるから。」
まさき 「ちょっとだけだって! な?」
写真部
  部長「だめです。見せられません。
    プライバシーの保護です。」

 オレ達はもう写真部部室の前まで歩いて来ていた。

まさき 「ケチッ!」

 

■題  名:その47 リアクション        【2000年06月20日】


坂井先生「なにぃっ!! 結婚っ!!!
    小泉先生がっ!! 相手は誰だっ!!」

 坂井先生はオレと同じリアクションをした。

まさき 「いや、だから、弟さんが!」
坂井先生「・・・そうか。結婚か。だよな〜。
    小泉先生だもんな。そうかぁ・・・。」

 坂井先生はよろよろと椅子に座ると、机にふさぎこんだ。
もうオレの声は聞こえていないようだ。
 職員室にいる他の先生達も気になるようで、 こっちをちらちらうかがっていた。  他の先生達に誤解されてはいけないと、周りの先生に、違う! 違う!と手を振ったが、やっぱりオレの姿はすでに眼中には無く、勝手に納得してうなずいたり、頭をかかえたりしていた。
 おいおいっ! 大丈夫なのか? この学校はっ!!

坂井先生「・・・おい。松室。最終指令だ。」
まさき 「は? 指令!?」
坂井先生「伝言をたのむ。」
まさき 「伝言? 」
坂井先生「小泉先生に・・・」
まさき 「小泉先生にっ!?」
坂井先生「・・・小泉先生に・・・」
まさき 「にっ!!」
坂井先生「・・・・・・・・」
まさき 「なんて!!」
坂井先生「は、話し、が、あります・・・。と。」
まさき 「ハナシ!?」
坂井先生「校門の前でまってますぅ、っと!!」
まさき 「マッテ、マス!?」

 先生は言い終わると走って職員室から出ていった。 その後を追うように他の先生二人も泣きそうな顔で 職員室をでていった・・・。
 みんな誤解してるよ。どうしよう。っと周りを 見渡すと、一人の女性教師と目があった。その先生は笑いながら首をかしげた。

女性教師「だめだこりゃ!」
まさき 「ぷ。ははははは」

 まあ、いいか。っと思うことにした・・・。

 

■題  名:その48 落ちた虫         【2000年06月20日】


 オレは仕方なく音楽室に向かった。
 また、こっそりのぞいてみる。
何人かの生徒が一列になり歌を唱っている。 合唱部のようだ。
 ピアノを弾いているのは・・・先生ではない。
どこだ?っと、もうすこし戸を開けて部屋全体を見まわたすと、いた! 部屋の隅で生徒達の練習を聞いていた。
 さて、どうする。 オレはどうやって小泉先生に近付くか考えた。
この音楽室は校舎の端にあり入口は一つしかない。
やっぱ堂々と入ったほうがいいか・・・。
でも、あの部員達にしつこく聞かれるんだろうなぁ。
一応、生徒には知られない方がいいんだろうなぁ。
などと考えていると、

女子生徒「ああっ!! のぞいてるっ!!」
まさき 「やば!?」

 見つかってしまった! さっきの女だっ!
しかも、はやいっ!!!
 オレはダッシュで逃げ出したが、
20mも 行かないうちに背中を掴まれたっ!
まじかよっ! こいつ!!

女子生徒「ちょっとあんた! 何のぞいてンのよっ!!」
まさき 「はなせよ! 関係ね〜だろっ!」
女子生徒「あんた、誰よ! 名乗りなさいよ!
    さっきものぞいてたでしょ!!」

 バレてる・・・。
他の女子生徒達も続々と集まりオレの周りを取り囲んだ。

女子生徒「名前いいなさいよっ!!」
まさき 「いって〜な。はなせよ!
    名前聞きてぇんなら、てめぇから名乗れっっ!!」
女子生徒「なにぃ〜。ずうずうしい!
    逆ギレか〜! このヤロウ!
    来いっ!!!」

 オレは音楽室に引きずり戻されていく・・・。
 あぁ。 蟻の群れに運ばれていく虫の気持ち・・・。
いまのオレには痛いほど、わかる。

まさき 「たすけてくれぇぇぇっっ!!」

 

■題  名:その49 フテイノヤカラ       【2000年06月21日】


 ダンッ!!
 音楽室の戸が閉められた。

女子生徒「あんた小泉先生をのぞいてたんでしょ!!」
まさき 「・・・」

 オレは黒板の前に立たされ、周りを取り囲んだ
女子生徒達の尋問をうけた。

女子生徒「小泉先生に何か正当な用事があるのか!
     名前を言いなさい!何年何組!
     ストーカーじゃないのか!
     黙ってないで何かいえっ!!
     答えろっ!」
まさき 「も、黙秘します!!!」
女子生徒「なんだと〜!!」
小泉先生「ちょっと! やめなさい! みんな!」

 この憎たらしい女子生徒がオレの胸ぐらをつかみ、 平手打ちをしようと腕をあげたとき、危機一髪! 小泉先生が止めに入った。

女子生徒「先生! なんで止めるんです!
    ストーカーですよ! こいつ!」
まさき 「ふざけろよ! なんでオレが!」
女子生徒「絶対そうよ! 挙動不審だし、
    名乗らないし!」
まさき 「だから、テメェから名乗れって
    いってんだろうが!」
女子生徒「なんだとぉぉ〜!!!」
まさき 「やるか〜」
小泉先生「やめなさい! 二人とも!」
女子生徒「・・・わかったわ。仕方がない。
    私から名乗るわ・・・。」

 女子生徒は一歩下がって腕を組み、
斜め目線で ポーズを決めて、キっとにらんでこう言った。

女子生徒「私の名はっ、桜田 幸子(さちこ)!
    この合唱部の部長!
    しかし! 合唱部とは世を忍ぶ仮の姿!!
    はたしてその実体は!
    我等の真の目的は!!
    そう、小泉先生を不逞の輩から守ること!
    その名も!
        小泉護衛隊!!!

    そして私が隊長の”桜のサチ”こと
    桜田 幸子だ!  」

まさき 「・・・・・・・・」

 

 

■題  名:その50 ぃよ 名調子!?      【2000年06月22日】


 時が止まったように静まり返る音楽室。
 小泉先生は顔に手をあててうなだれている。

まさき 「あ、あの〜。質問・・・。」
サチ隊長「なんだ。言ってみろ。」
まさき 「なんで、そんなこと・・・」
サチ隊長「オマエのような奴がいるからだっ!」

 隊長はオレを指差して怒鳴った。
そして、うしろ手に腕を組むとゆっくりと
右へ左へと歩きながら話し始めた。

サチ隊長「この学校にはオマエみたいな奴がウヨウヨいる。
    確かに、女の私達から見ても
    小泉先生はため息がでるほどのいい女だ。
     世の男どもが憧れるのも仕方ないだろう。
    しかしっ!!
     毎日毎日押し寄せるラブレターの洪水、
     毎朝毎夕くり返される登下校の行列、
    そして、
     悪戯電話に誹謗中傷!
    数々のストーカー行為・・・」

隊員A 「 気にしてないわと小泉先生、 」
隊員B 「 いつも笑顔でいたけれど、  」
隊員C 「 日毎にやつれるその頬は、  」
隊員D 「 無情な浮き世を写し出す、  」

サチ隊長「 この世に神はいないのか、
      それとも善では裁けぬか、
      ならば我等が悪となり、
      悪を以て悪を絶つ、それが!」

隊員一同「我等! 小泉護衛隊っ!!」

サチ隊長「活動を始めてから約一年半。
    しょっぴいた悪党の数、実に八十と三人。
    おどろくはその中に同校教師が十一名。
     どうなってんだ世の中は!」

まさき 「・・・ごもっとも・・・」

 

この日記に登場する人物、団体、事件等は、すべて架空のものです。
なお「書いた日」とは作者の書いた日付けで、
作品中の日付けとは関係ありません。

 

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