雑動部活動日誌61〜70

■題  名:その61 うっ・・・!        【2000年07月03日】


まさき 「オレは監視されてるのか!?」

 辺りを見回したがやっぱり誰もいない。

まさき 「オレをひっぱたいた奴がチクッたんだな。 きっと。
     それにしてもこの手紙。脅迫か!?
    なにが会長だ。腹立つ!
     オレはクラスを聞いただけなのに、
    涼眞さんの靴を探してあげてるだけなのに。
    ったく、どんなやつが会長なんだ?」

 その手紙を捨てようとゴミ箱を探してうろちょろ していると、偶然、
オースポ部副部長の小島先輩が 歩いてきた。

小島先輩「お、君! え〜っと・・・」
まさき 「松室です。」
小島先輩「そうそう。松室君。部の方は順調かい?」
まさき 「ええ。まあ。先輩の方は?」
小島先輩「う〜ん。そうだな〜。ぼちぼち。」
まさき 「!? 楽しくないんですか?」
小島先輩「いや、楽しいんだけどね・・・。
    ちょっと、嫌な先生に目付けられちゃってね。」
まさき 「!?」
小島先輩「体育の五十畑先生なんだけど。
    なんか先生、
    『あっちフラフラこっちフラフラして
     一つのことに打ち込まない』って
    のが気に入らないらしいんだ。
     で、今日さっきまで、体育教官室の
    掃除させられててさぁ。『お前等使いっぱなしで
     体育館の掃除なんかしたことないだろう!』
     とか言っちゃってさぁ。いつもしてるって〜の!
    それにここは教官室だっつ〜の!
    まいったよ。」

まさき 「それはお気の毒様・・・。あ、そうだ。
    先輩、トゥルーブリーズウェイ会長、
    しってます?
小島先輩「!?」
まさき 「こんな手紙が来たんですよ。」
小島先輩「うっ・・・!!」

 先輩は固まってしまった。

 

■題  名:その62 一度だけ         【2000年07月04日】


まさき 「先輩?」
小島先輩「・・・」
まさき 「知ってるんですか?」
小島先輩「・・・」
まさき 「先輩!!」

 小島先輩の顔が青ざめていく。

小島先輩「そ、その手紙は、例の靴を
     探してて届いたのか?・・・」

まさき 「いえ。涼眞さんのクラス知らなかったので、
     聞いてまわってたんです。」
小島先輩「そうか。 じゃあ、もう、二度と、
     そんなことはしないことだ・・・」

 小島先輩はそう言いながら去っていった。

まさき 「先輩! 知ってるんですか!
    誰なんです? 会ち・・・」

 小島先輩は慌ててオレの口を手でふさいだ。

小島先輩「バッ、バカやろう!
    大声でそんなこと言うんじゃない!
    いいか!
    一度だけだ。一度だけ忠告しといてやる。
    今回限りだ!
    あとはお前が何を言おうと勝手だが、
    例えお前の身に何か起こっても、
     オレの目の前でお前に何かあっても、
     オレはお前を助けることは出来ないし、
     どうすることも出来ない・・・」

まさき 「・・・・・・・!?」

 小島先輩はオレの口をふさいだまま、かすれたような小さな声で言った。目を大きく見開き、 額にはかすかに汗がにじんでいる。

小島先輩「会長の正体は誰も知らない。
     実在するのかどうかもわからない。
     誰も会ったことは無いし、
     見た者もいない。
     会長の意思は手紙で届き、
     命令は必ず遂行される。
      そして、会長の正体を知ろうと
     する者は何か事故に見舞われるか、
     この学校から追放される・・・。
      いままで何人の生徒がそうなったか・・・」

 小島先輩はゆっくり向きをかえると 暗い表情で去っていった。

まさき 「マジかよ・・・」

 

■題  名:その63 Zファイル        【2000年07月05日】


まさき 「何か依頼来てるかな。」

 チラシには『御依頼は雑同部部長(一年三組松室)にお願いします。       直接お出でいただいても、手紙などの文書でも結構です。』と書いておいた。もしかしたら、もう机や下駄 箱に来ているかもしれない! と、オレは小走りで学校に来て、 わくわくしながら下駄 箱の中をのぞいた。 が、いつもと変わらない。オレの上履きが一足。 そしてその奥にコンビニの袋にくるまった 泥だらけの片っぽだけの上履きがあるだけだ。
 そうそう。この泥だらけの上履きとは、先日中庭の排水溝に詰まっていたモノで、いつかこの持ち主を探しだして文句の一つでも言ってやろうととっておいたモノだ。  しかし、その捜査は行き詰まっている。 一年の上履きの色(ゴムの所)は青。 二年は紺。三年は緑。ところがその上履きは小豆色(エンジ)なのだ。 いったい誰のモノなのだ? 謎だ・・・。 未解決問題。Xファイ・・・いや、雑同部のざ、 Zファイル行きだ。
 オレは教室に行き、机の中を見てみた。 やっぱりいつも通りだ。
 置きっぱなしの教科書とノート。 だからオレの鞄はいつも軽い・・・。

まさき 「ねえねえ。
    誰かオレ、訪ねてこなかった?」
同級生 「いや、来て無いとおもうよ。」

 いつも早く来ている同級生に聞いてみたが、 やっぱり、依頼はまだ来ていないようだ。

坂井先生「はい、席に付け〜。朝の学活を始めるぅ〜。」

 今日の坂井先生はとても機嫌がいい。
オレの名前も飛ばさず呼んだ。昨日と全然違う。 なんか無気味だ。
 学活を終えると先生は戸の方へ行かず、 オレの方へ歩いてきた。

まさき 「!?」
坂井先生「ちょっと話がある。
    今日土曜で半日だけど、午後空いてるよな!」

 坂井先生はポンっとオレの肩を叩くと鼻歌を歌いながら教室を出ていった。

まさき 「なんだ! 何をしょうってんだ!
    んん?
      ・・・この鼻歌どこかで・・・」

 

 

 

■題  名:その64 鼻歌          【2000年07月06日】


 三時限目の授業も終わり、掃除の時間になった。
朝からずっと坂井先生の言葉が気になっていたが、 それ以上に先生の歌っていた鼻歌が気になり授業中も頭の中を流れ続けた。思いだそうとすればするほどその曲は不確かな旋律に変わっていき、 時間が経てば経つほどかすれるように原曲すら思い出せなくなっていた。

  まさき 「なんの用事なんだ。先生・・・。怖いな・・・。」

 オレは机を運んでいると、またあの鼻歌が頭の中を流れはじめた。
と、その鼻歌をなぞるように 教室のスピーカーから同じ旋律が流れ出した。

まさき 「んん!? この曲! 先生の鼻歌だ!!」

 いつもは掃除時間には決まったクラシック曲が流れるのだが、今日はなぜか違う曲だ。

まさき 「・・・・・・ちょっとまてよ・・・。
    この曲・・・。この曲は。
    この曲はっ!!
    この曲はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!
    小泉護衛隊のテーマ!!
     ・・・・・・・!?
    しかも、歌っているのは、坂井先生の声じゃないのか!?
    いや、坂井先生に違い無い!!」

 他の生徒は気付いていないようだ。
オレは愕然と、教室の隅に棒立ちになっていた。

坂井先生「・・・そうさ。私の声だよ。」

 先生はいつの間にか教室に来ていてオレの背後からそっと近付き、ボソッと言った。

坂井先生「よーし。早く掃除終らせて帰るぞ〜、みんな!
     ははは!」

 坂井先生はあの日あの後小泉護衛隊の「仕置き」を受けたのだろうか。それともすでに 前科(CD)があったのだろうか。
 クラスの前を通りかかった先生がクスクス笑いながら通り過ぎる。

坂井先生
まさき 「あいつも・・・か。」

 

■題  名:その65 おうかする!        【2000年07月07日】


 帰りの学活が終った。
坂井先生が教卓で手招きしている。
どうせまた、何かやらされるんだ。 ああ、憂鬱だ。 他の生徒の笑顔がまぶしい。 土曜の放課後に響く笑い声。ああ、オレもあっちに行きて〜。

坂井先生「松室く〜ん!
    どうしたんだ。廊下なんか眺めて。」
まさき ( なにが「く〜ん」だ! )

坂井先生「ちょっと頼みがあるんだけどな〜。」
まさき ( そら来た )

坂井先生「明日の日曜日なんだけどさぁ。」
まさき ( 日曜も出てこいってか! )

坂井先生「ちょっと一緒に行ってもらいたい
    ところがあるんだけどなぁ〜」
まさき ( 一人で行けっつうの! )

坂井先生「空いてる?」
まさき 「(空いてるけど)空いてません!」

坂井先生「おいおい、即答じゃないか。嘘だろ、それ。」
まさき 「嫌ですよもう。掃除とか片付けは!
     オレは青春を謳歌する!」

坂井先生「まだ、何をするって言って
    無いだろう。なにが謳歌だ。」
まさき 「言わなくてもわかります。」

坂井先生「ほう。じゃ当ててみろ!
    当てられなかったら、決定な!」
まさき 「オレはやりません! 帰ります!」

 オレは席を立ち歩き出した。 すると、先生はオレに聞こえるように大声でこう言った。

坂井先生「そうか、残念だな〜!
    遠足の下見なんだけどな〜!」

 ピクッ! 耳が反応した。

坂井先生「え ん そ く の!」

 ピクピクッ!! 足が止まった・・・。

坂井先生「そうか、行けないか。残念だな〜」

 か、体が勝手に動き振り返った。

まさき 「おとも致します!」

 

■題  名:その66 さが        【2000年07月08日】


 行き先も聞かずに答えてしまった。
遠足と聞いただけで胸が踊るのは、学生の悲しい!?習性、性だろうか。今年の1年生の遠足は「白鷺山(しらさぎやま)ハイキング」だそうだ。なぜ先生達が行かないのか聞いてみた。

坂井先生「・・・。」
まさき 「怪しい・・・。」

坂井先生「もう行ったんだ、下見。」
まさき 「は?」

坂井先生「今回行くのは! じゃじゃ〜ん。」
まさき 「他の学年の!」
坂井先生「雨天時の、サファリパーク。」
まさき 「・・・」

 それでもオレは行くことにした。
雑動部の三人で来てくれと言うことだったが、 ゆうちゃんはともかく、カズは聞いてみないとわからない。とりあえず説得はしてみると答えた。

坂井先生「じゃ。明日の朝、学校に7時な。」

 先生はまたあの鼻歌を歌いながら去っていった。

まさき 「あ、先生! 他に誰か来るんですか?」
坂井先生「ふふ。お楽しみ。
    あ〜! 明日が待ち遠しいな〜!」

まさき 「・・・。
    小泉先生か・・・・!?
     他の先生は、何故行かないんだ。
    行きたくないような場所なんじゃ・・・。
    まいっか。
     やっと雑動部に来たまともな仕事!
    だといいんだけど。」

 夕方、オレはゆうちゃんとカズに電話した。
ゆうちゃんはOK! カズは、

かずお 「あぁ、いいよ。
    オレ日曜は塾ないから。休みは休むって
    決めてるんだ。」

まさき 「へぇ〜・・・」

 意外だった。

 

■題  名:その67 校門前          【2000年07月09日】


 日曜日、朝6時50分。
オレが校門前に行くともう何人か集まっていた。

まさき 「1、2、3、4、5、6、7、8人!?」

 小泉先生。ゆうちゃん。カズ。そして、 女子生徒が5人・・・。
私服なので最初わからなかったが、小泉護衛隊だ!おいおい。

まさき 「お、おはようございます。」
小泉先生「おはよう。」
ゆういち「おーす」
かずお 「おーす」
サチ隊長「おう。」

 サチ隊長はオレの方をチラッっと見て、 低い声で答えた。
不機嫌そうな感じだ。 それとも、もともとこんな感じなのか。

坂井先生「おーみんな。おはよう!
    そろってるか!
     小泉先生、おはようございます!
    今日はわざわざありがとうございます。
    では、出かけましょう! 行くぞ、みんな。」

 坂井先生だけやけに元気がいい。

かずお 「え、車、バスじゃないんですか?」
坂井先生「電車で〜す!」
かずお「ええ〜!!」

 オレ達は駅に向かった。 途中、オレは隊長に聞いてみた。

まさき 「ぼ、僕の無実は証明されたんでしょうか?」
サチ隊長「一応な。だが、先生を人質にとった
    ことは許されない。」
まさき 「え! じゃあ、仕置きですか!」
サチ隊長「まあ、いずれな。」
まさき 「かんべんしてくださいよ〜!」

 なにかサチ隊長は、機嫌が悪いというより、ほかのことで頭が一杯という感じだ。  他の隊員は弁当がどうだとか、おやつがどうだとか言って騒いでいる。そこにはなぜか ゆうちゃんも混じっている・・・。

 

 

 

■題  名:その68 ちゃっちゃにゃ〜       【2000年07月10日】


 途中、坂井先生は何故、自分が下見に行くことに なったか、オレ達雑動部の三人にだけ話した。

坂井先生「おとといの夜遅く、電話がかかってきたんだ。
     学年主任の小暮先生から。午前1時だぞ!!
    ・・・きのうの早朝でもあるんだけどな。
      で、小暮先生。
    すっごい酔っぱらってるんだよ。
    ろれつがまわらなくなっててさ。
    受話器から酒くさい息が、臭ってきそうなくらい!
     こんな時間に電話かけるな!
    この酔っ払いっ! とか思ったんだけど、
    とりあえず話を聞いてみた訳だ。
     すると、研修で日曜日までに帰れそうに
    ないから遠足の下見、代わりに行ってくれ
    って言ってるみたいなんだ。
     ほんとに研修なのかよ! って感じでさ。
    なんか腹立ってきて、お断りします!
     って言ったんだ。そしたら、」

小暮先生「え! だめにゃの? だめ〜?
    ああ、弱っちゃっちゃにゃ〜。
    南里先生と行く予定だったんなけど、
    南里先生も行きたくないって言ってぅし」
坂井先生「行けないじゃなくて、
    行きたくない!? はあ〜!?」

小暮先生「誰かもう一人、先生見つけて、
    一緒に行ってほしかったんだけどな〜。
    誰でもよかったんだけどな〜。」
坂井先生「私は行きま・・・・・・・・・・
    小暮先生! 誰でもいいんですか?
    一緒に行く先生? こい・・・。
    誰でも!!」

小暮先生「うん。だれでも〜オッケ! だから頼むよ。
     教頭に怒られちゃうよ。」
坂井先生「わ、わかりました。
    誰でもいいのなら!」

小暮先生「ほんとに! いやさすが坂井先生だな。
    じゃ、私の机に資料入ってるから
    よろしくね。ばいば〜い!
     (OK、OK月曜まで休みになったから
      遊ぶぞ〜。ね〜、ケイコちゃ〜ん。
      ははははは!! さ、飲も飲も!)」

坂井先生「・・・・・・・・・・・・・・・・
     ・・・・・聞こえてるッちゅうねん!」

 

■題  名:その69 六番目の         【2000年07月11日】


ゆういち「それで小泉先生にしたわけね。」
かずお 「小暮先生がどうしても小泉先生に
    お願いしたいって言ってました〜
    とか言っちゃって。」
まさき 「私からも是非おねがいします。
    とかも言っちゃって。」
かずお 「小泉先生の顔を見るとあんまり
    乗り気じゃなさそうだから、」
まさき 「こりゃヤバい! と思って、
    なんなら合唱部の生徒も一緒にどうです?
     大勢の方が楽しいでしょ。
    とか言っちゃって。」
かずお 「で。とりあえずOKはもらったけど、
    合唱部が一緒だと、二人っきりになれないなぁ
     とか思っちゃって。」
まさき 「こっちも誰か連れてって、合唱部の方をまかせるか。
     とか考えちゃって。」
かずお 「んじゃ。雑動部の連中をおまけで連れてくかぁ。
     とか思っちゃって。」
まさき 「そう。おまけで連れて・・・
     って! お〜い!!
    オレ達はおまけかっ!!」

 坂井先生は気まずくなったようでその場を立ち去った。

かずお 「まあ、いいじゃないのそれはそれで。」
ゆういち「来たからには楽しまなくちゃ。」
まさき 「楽しめるのか・・・?」

 オレ達三人、車窓を流れる景色を会話もなくただ見ていると、遠くで坂井先生の声が聞こえた。

坂井先生「やい、そこのじじい!
    小泉先生をジロジロ見るな!
     この六番目の小泉護衛隊員が黙っちゃいね〜ぞ!
     あっち行けっ!!」

まさき 「・・・六番目の隊員・・・。」

 

 

 

■題  名:その70 白猫サファリ        【2000年07月12日】


 電車をいくつか乗り換え、人気のない小さな駅で降り、そこから、1時間に一本のバスに乗りこんだ。 バスは一面の田んぼの中を走り、ゆるやかな山道をくねくねと登った。そして、こずえを心地よい風に揺らす長い長い林を抜けると、そこに 「白猫サファリパーク」の広大な敷地が突然姿を現した。

まさき 「うわっ! でっけ。
    もっとショボいんかと思ってた・・・」
坂井先生「よし! みんな。降りるぞ〜!」

 出発からちょうど3時間かかって到着した。
 入場券売り場に来ると坂井先生はオレ達雑動部を集めた。

坂井先生「おい、おまえら、ここからがお前らの出番だ。
     いいか、よくきけ・・・」

 本来、遠足で来た時にはクラスごとに2つに 別れて専用の園内バスに乗る。乗用車はそのまま 入れるが観光バスでは入れない。
  でも、それじゃぁ、今日来た意味がない。 小泉先生と二人っきりになれなきゃ意味がない。 ということでオレ達を使うってわけだ・・・。
 まず、予定通りみんなで園内バスに乗る・・・ ことにする。
バスは必ず時間どおりに発車する。 そこで、雑動部はなんらかの手段を使って、 護衛隊を乗せずに時間を稼ぎ、 小泉先生と坂井先生が乗ったバスを発車させてしまうこと。この際、一般 の人はよしとする。

まさき 「ちょっと〜、無理ッスよ〜!
    護衛隊ッスよ〜。殺されるっすよ。」
坂井先生「それをどうにかするのがお前達の使命だ。
     高い金払ってンだ。何とかしろ!
    学校からは二人分の費用しか出ないんだぞっ!
     学割とはいえ8人分はきついんだ!
    いいか! なんとかしろよ!
    たのんだぞっ!!」

まさき 「・・・おいおい・・・」

 

この日記に登場する人物、団体、事件等は、すべて架空のものです。
なお【00年00月00日】とは作者の書いた日付けで、
作品中の日付けとは関係ありません。

 

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