雑動部活動日誌81〜90

■題  名:その81 またかよ      【2000年07月23日】


 塾が終り、電車に乗ったカズ。
まわりは帰宅するサラリーマンでかなり混んでいる。
塾が逆にあれば(上り下り)楽だったのに。 本人もそう言っていた。
 そしてその日、もうすぐ降りる駅に着くという ところで電車が止まった。

乗客一同「あぁ、またかよ〜」

 乗客も慣れたもので、「なんだなんだ!?」と慌てる様子もなく、
新聞や雑誌、広告を見たまま合い言葉のように一斉に言うのだった。
 最初のころは、カズも止まる度にキョロキョロ していたらしい。
「さすがに、こうしょっちゅうあると慣れてくるな。
今じゃ、 『あ、こいつまだ新人!?だな!』 とか
わかるようになってきたし。
オレも初めはあんな風だったのかと思うと、
なんか恥ずかしくなってくるよ。」
カズは前にそう言っていた。
 その日は結局、30分経ってようやく動き出した。
  原因は強風だった。

かずお 「ふざけろよ。なにが強風だよ。
    ぜんぜん吹いてね〜じゃね〜か。」

 改札を出たカズはボソっと言った。
よく聞くとあちこちで同じことを言っている。 それが可笑しくて、たまに吹き出すことも あるらしい。が、笑って許せるのも数十分で、30分、1時間を超えるとさすがに笑えない。 そんな日は改札や駅のまわりで、空き缶や看板、 壁などを「蹴る」音が終電まで続くとか・・・。
 カズは30分待たされ少し不機嫌だった。 無意識に手をポケットに入れ、道ばたに 転がってる小石を蹴ったりして、かかとを 鳴らしながら歩いていた。
 と、駅からそう遠くないところで、カズは 数m先で自転車を押している中学生くらいの女の子が目に入った。

 

■題  名:その82 イタズラ     【2000年07月24日】


 自転車を押している人を見るのは、塾に通うようになってから何度もあった。その光景は 電車が遅れた日によく見られた。
おそらく、電車が遅れたイライラを、駅前に停めてある迷惑駐車に あてて誰かがイタズラしたのだろう。カズはそう 解釈していた。

かずお 「また、一人、とばっちり受けてるよ。
    まぁ、駐輪場に停めない方も悪いんだろうけど。」

 カズはそう思っただけで、別に気にもかけず 歩いた。
が、5m位の距離になってカズは気が 付いた。

かずお 「ん!? 前輪持ち上げて歩いてる?」

 そう、その彼女は前輪のカギが掛かったまま、 ハンドルを抱えるように持ち上げ、身体を大きく 反って、一歩一歩、歩いていた。

かずお 「うわぁ。最悪・・・。 こりゃ、キツイな〜。」

 「パンク」とか「サドルがない」、「チェーン の外れ」は何度か見たが、これは初めてだった。 「でも、なんでカギが?」と思ったが、 「どうでもいいや。早く帰ろ。」と彼女を 追いこした。

かずお 「!?」

 彼女の横を通り過ぎる時、カズの耳に何か聞こえた。

かずお 「・・・。」

 鼻をすする音だった。 彼女は泣いていた。
肩を小さく動かして、しゃくりあげていた。

かずお 「(まじかよ・・・。
    ったく。そこのオヤジ!
     酔っぱらってないで優しい言葉でもかけてやれって!
     そこのあんチャン!
    ボサっとしてないで手伝え!)」

 カズはちょっと可哀想だなと思ったが、 自分から何かしようとは
思わなかった。 それでいて、まわりの通行人に「助けてやれ」 と、にらみながら心の中で言うのだった。 「これもみんな電車のせい。うらむんなら 電車をうらみなさい。」と、カズは一歩、また 一歩と彼女から離れて行った。

 

■題  名:その83 善良心      【2000年07月25日】


 一歩、また一歩と足を運ぶたび、カズの善良心は揺さぶられた。
しかし、カズはその心を押し殺し、 平静を装った。
「気にするな、気にするな。」と 自分に言い聞かせていたが、前方確認もそこそこに 神経は耳に集中していた。
 彼女から10m位離れた時だった。

 「ガシャン。バサッ。」

 後ろから音がした。 カズはとっさに首を向けた。 彼女は立っていたが、自転車が倒れ、カゴの中の 荷物が飛び出している。彼女は倒れた自転車を見て立ち尽くしていた。  と、次の瞬間、

    「ガシャ、ガタタ。」
かずお 「お!? あ・・・」

 後ろを向いたまま歩いていたため、知らぬ間に 横に大きく反れ、歩道わきに停めてあった自転車に ぶつかり、まわりにあった自転車3台を巻き込んで 仰向けになって倒れた。
 最初何が起こったかわからなかったが、事体が のみこめてくると、とても恥ずかしくなり、急いで 立ち上がろうとした。が、背負っていたバッグが 何かに引っ掛かっていてとれない。仰向けだった ので道行く人の「なんだこいつ」という顔が見えて 余計に恥ずかしい。カズは必死でもがいた。 バッグを肩から外せばいいんだ。そう気付いたのは すでに息が切れはじめていた時だった。
 「オレは別にあせっちゃいないさ!  取り乱しちゃいないさ!」とアピールするように カズはゆっくりと立ち上がった。そして、バッグを 取り、何ごともなかったようにビッと背筋をのばし 歩き出そうとしたとき、横に人の気配を感じた。

かずお 「ん!?」

 見ると2m位離れたところに彼女が立っていた。

彼女  「大丈夫? 君?」
かずお (オレの方が心配されてるぅ〜!?)
    「は、ははは」

 カズは無理に笑った。 それを見た彼女は笑みを浮かべた。

 

 

 

■題  名:その84 パニック      【2000年07月26日】


彼女  「びっくりさせてごめんなさいね。」

 彼女はそう言うと、再び自転車の方へ戻った。
彼女の自転車はすでに立てられ、荷物も拾ってあり10m離れたところ、つまり最初に倒した歩道の隅 においてあった。どうやら、カズが転んだのは、 自転車を倒してびっくりさせたから、と思ったらしく、気になって怪我がないか見に来たようだった。
 カズはどうしていいかわからずただ立っていた。 その横を彼女が自転車を引いて通 り過ぎて行った。 彼女の方も恥ずかしかったのか、カズの方へ顔を 向けることはなかった。
 一歩また一歩、彼女はゆっくりと遠ざかって行く。

かずお 「あの〜!」

 カズの口から言葉が出た。
カズ自身、驚いた。 なにか、不思議な力というか、運命というか、 そんなようなモノが働いたというか、 言わされたというか。気が付いたら言っていた。 初対面の人に自分から話しかけるなんてことは、 まず無い。

彼女  「・・・」

 彼女は振り向いた。
が、えてして、こういう「力」が働くのは、 ほんの取っ掛かりの部分だけで、あとは自分の力で何とかしなさい! と言わんばかりの理不尽な!?現実がデーンと待ち構えているのだ。実際、彼女と目があったカズは、わけも わからぬ極度の緊張に襲われ、身体がほてり、 鼓動が聞こえ、「オレはなに緊張してんだ! なんで話しかけたんだ! どうすんだ!」 と頭のなかも混乱し始め、ついには真っ白に なってしまった。

かずお 「・・・・・・・・・」

 なんの返答もないカズに、彼女は再び 歩き始めた。

かずお 「落ち着け、かずお!
    いったいどうしたんだ! 冷静になれ!
    いろんなことがいっぺんに起きたから
    ちょっと混乱してるだけだ。
    すぐ治る! お前ならできる!」

カズは自分に言い聞かせた。

 

■題  名:その85 いい方法      【2000年07月27日】


 カズは目をつぶり深呼吸をした。
そして、緊張をほぐす何かいい方法はないか 考えた。
「人という字を・・・違う。
 みんなをカボチャだと・・・違う!
 お椀の水を4回にわけて・・・違う!!
 足を高くして寝ると・・・違うっ!!!
 傷口は心臓より高く・・・ちが〜う!
 思い思われ振り振られ・・・!?
 地震、雷、火事、オヤジ・・・」
やはり、カズの頭の回線はおかしくなっていた。 少し暴走ぎみのカズの頭はいろんな記憶を 片っ端から呼び起こした。「ん〜ん。」と唸り ながら、その一つ一つを違う、違うと整理して いくと、ある記憶が「緊張」というキーワードで 引っ掛かった。
 その記憶はこんな会話だった。

まさき 「授業中さあ。
    腹の音がなりそうになると、すっげ〜
    緊張しない?」
ゆういち「うん。するする!」
かずお 「ちゃんと朝、食ってこないからじゃね〜の?」
ゆういち「いや。ちゃんと食べてくるよ。」
まさき 「おう、オレも。
    前は食べたり食べなかったりだったんだけど。
    いつからか腹の音、気になるようになってさ。
    それから、ちゃんと食べるようにしたんだ。
    でも、鳴るんだなぁ、これが・・・」
ゆういち「そうそう、食べても食べても。」
かずお 「・・・」
まさき 「食べても鳴る。もっと食べても鳴る。
    なんかこう、胃袋もさ、筋肉みたいに、
    だんだんパワーアップするのかな?
    で、食べても食べてもって・・・」
ゆういち「胃が大きくなるってこと?」
まさき 「いや、たぶん、ムキムキマンになってさ
    すげー速さで消化して、
     『フン、まだまだっ』とか言ってんだよ」
かずお 「・・・」
まさき 「あと緊張するのが、鼻水!
    あとからあとから出てきてさ〜。
    いっそ、ティッシュ鼻に詰めようかなって。
    最悪なのは、両方いっぺんに来た時だな。
    もう、授業どころじゃないって感じ。
    腹の虫のタイミングをはかりながら鼻を
    すする緊張感!?
       かんべんしてくれよ〜!」

 カズは思い出し笑いをした。

かずお 「っぷ! くく。」

 

■題  名:その86 変な汁      【2000年08月01日】


かずお 「ハハハハハハハハハハッ」

 ひとしきり笑うと、カズはとても気が楽になり、さっきまでの緊張がうそのようにとれた。 頭の中もスッキリと整理され、次に何をするべき なのか、答えはすでに出されていた。

かずお 「あのー!
    カギ。どうしたんですか?
    無くしたんですか?」

 彼女はすでに10mほど進んでいた。 カズは小走りで近付いた。
  なんだ。簡単なことだったんだ。オレには関係ない。と見て見ぬ振りしよとしたからこんな目にあったんだ。最初からやってりゃよかった。 おかげで変な汁、出てきたぜ。カズはそう思った。
 彼女はすこし驚いたような顔をして振り返った。 カズは何も言わずに前輪のカギの前へまわり、 しゃがみこんだ。

彼女  「あ、いいんです。
    無理だと思います。 カギはあるんです。」
かずお 「カギはある!?」

 カズはカギを見て苦笑いをした。
カギ穴に何か詰まっている・・・。
それは小枝のようだ。誰かがカギを開けようと して折れたらしい。きっちりとはまっていて、 素手ではもちろん、針や「−」ドライバーでも とれそうにない。

彼女  「無理でしょ?」
かずお 「ハハ。壊すしかないね。壊します?」
彼女  「壊せるの?」
かずお 「多分ね。」
彼女  「・・・」
かずお 「壊していいの?」
彼女  「はい。お願いします。」

 彼女はにっこりと笑って言った。

 

■題  名:その87 ガンッ!!      【2000年08月02日】


 彼女の笑顔を見たカズは一瞬ドキッとした。
今までよく見えなくて気にしていなかったが、 薄暗い街灯に照らされ赤く光る長い髪、白い肌、 切れ長の鋭い目、そして、その目には似つかない やさしい笑顔。カズの心を魅了するには十分だった。  カズは慌てて目をそらした。
 さてどうやって壊すか。カズはとりあえず、 いつも家のカギと一緒にキーホルダーに付けている 小型の10得ナイフを取り出した。

かずお 「鉄ノコがあれば切っちゃうんだけど。」

 そんなもの付いてる訳無いので、ドライバーで とれるネジをはずして、カズは辺りを見渡した。

彼女  「!?」
かずお 「お、あったあった。」

 カズは何かをとってきて言った。

あずお 「ちょっと傷つくかも知れないけど、
    勘弁して下さいね。」
彼女  「え!?」

 カズの手には大きな石があった。
 ガンッ! ガンッ! ガンッ!
 ガァッ! ガリッ! ガンッ!
 「あっ!!」
 カズは突然声をあげた。

彼女  「どうかした?」
かずお 「あ、いや。ちょっと・・・。うーん。
    あの、これ、持っててもらえます?」

 カズは腕時計を外して彼女に渡した。

彼女  「!?
    傷! 付いてる!?
    もしかして今ついたの?」
かずお 「気にしないで下さい。」
彼女  「え、でも。
    これ、すごい高そうな・・・」
かずお 「・・・もらいモノです。 っていうかお下がりかな。」
彼女  「お下がり? 知り合いの?」
かずお 「父親です。」
彼女  「父親・・・?」
かずお 「うちの父が海外赴任に発つ時、くれたんです。
     もう3年会ってないかな。電話では話すけど。」
彼女  「大事な物なんでしょ?」
かずお 「う〜ん。まあ。」
彼女  「私のせい!」
かずお 「違いますって! 僕が勝手にっ!」
彼女  「ごめんなさい!」
かずお 「いや、だから、誰のせいでもないです。
    自転車のせい。いや、電車のせいです!
    電車が遅れたからこんなことになったんです。」
彼女  「・・・」
かずお 「電車が遅れたから・・・
    みんなイライラして、酔っぱらって、
    ゴミ散らかして、町がよごれるんです。
     先生に怒られるのも、テストの点が悪いのも、
     授業中眠いのも、給食に嫌いな物ばっかでるのも、
     ぜ〜んぶ電車のせい!」
彼女  「それは言い過ぎじゃ?
    ・・・ぷっ。ははは」
かずお 「ハハハハハハハ」

 

■題  名:その88 カッコ悪!     【2000年08月03日】


 ガンッ! ガンッ! ガンッ!
 ハンドル越しにのぞく彼女の顔を、 カズは時折、チラチラと見た。  自転車のカゴには半開きのバッグがあって、 中から「〜のバイエル」とか「〜練習曲」という本が見えた。ピアノ教室かなんかの帰りだったようだ。

 ガンッ! ガンッ! ガンッ!

彼女  「でも・・・
    こうやって壊せるんだったら、
    カギの意味ないんじゃないかな?」

  ガンッ! ガンッ!

かずお 「・・・。
    ようは、公然と壊せるかどうかじゃないかな?
    何か聞かれた時の言い訳っていうか、
    大義名分ていうか。それがあるかないかだと思うよ。」
 ガンッ! ガンッ!

彼女  「う〜ん。そんなものなのかな〜。」
 ガンッ! ガッ!

かずお 「おっしゃ〜!
    あとは無理矢理、ひ、きぬい、てっと、
    くくくっ!」
彼女  「・・・」
かずお 「ようし!
    これでとりあえずは走れるようになりました! 」
彼女  「ありがとう!」
かずお 「後は明日にでも自転車屋にいって
    新しいのに付け替えてもらって下さい。」
彼女  「ホントにありがとう!
    この自転車、家まで抱えて帰るのかと思ったら、
    私、泣きそうでした。」
かずお 「そ、そうですか。」

 もう泣いてたじゃン、とカズは思った。

かずお 「それじゃ、これ。」

 カズはボコボコに変型したカギを彼女に渡すと ニコっと微笑んで何も言わずに歩き出した。

彼女  「あ、き、君・・・。あ、ありがとう!」

 名も名乗らず、振り返らず去って行く。 それが男だと、カズは思った。なおかつ、途中で追いつかれるとカッコ悪いので、すぐ先の角を曲がって遠回りをして帰った。
が、家に着いて気が付いた。 時計を預けたままだ!
 カッコ悪っ!

 

■題  名:その89 再会      【2000年08月04日】


かずお 「どうすっかな〜。」

 あの腕時計は、いつもピカピカに磨いて、 専用のケースに入れておく。とかいう特別 大事に していた物というわけではないが、「泣くなかずお。 これやるから。父さんだと思って使ってくれ。 父さんの分身だ。いつも、お前のこと、 側で見てるからな。」と言われ、当時8歳の幼心に 「この時計が壊れたら父に何かある。  この時計を無くしたら、もう父には会えない。  いつも付けていないと父に忘れられる。」 といった思いがあり、学校以外の外出の時は大抵 この腕時計をしていた。そして、その思いは今でも 多少残っていて、家に着いてから鳴った電話を、 「父に何かあったんじゃ!?」と思ってドキドキ していた。

かずお 「しょうがない。
     奇跡の再会に期待するか・・・。」

 次の日の塾の帰り。 電車は遅れずに到着した。 昨日彼女が自転車を抱えて歩いていた辺りを カズはゆっくりと歩いた。 カズはまた彼女に会いたいと思っていたが、 彼女の姿は見つからなかった。
「ああ。  今日はダメか。」 と思ったとき、ある雑居ビルの入り口から 声がした。

女A  「気に入らないんだよ! あんた!」
女B  「その赤い髪! その目!」
女C  「むかつくんだよ!」
かずお 「・・・」

 声はするが姿は見えない。 いつもならそのまま「ヤンキー? 酔っ払い? うるさいな〜。」と心のなかで言い、通り過ぎる のだが、「赤い髪」「その目」が何か心に 引っ掛かった。
 カズはその雑居ビルの入り口に近付いた。

かずお 「ん? 誰かいるぞ。」

 いかにもという感じの恐いオネェさん3人が 一人の娘を囲んでいた。

かずお 「!?」

 その娘は昨日の彼女だった。

 

■題  名:その90 細い腕      【2000年08月05日】


女A  「それでどうなのよ。
    私達に、那須さんに、詫び、いれんのか?」
彼女  「・・・」
女B  「どうなんだよ!」
女C  「それとも、しばらく学校休むか?
    病院で。ハハハハッ!」
かずお 「(マジ恐い・・・)」

 どうやら、同じ学校の生徒らしい。

彼女  「別に謝る理由はないし、あなた達の
    話しを聞く理由も無いわ。」
女A  「っな、なんだと!」

   ピシャッ!

彼女  「っぐ・・・」

 女の手が彼女の頬をうった。 彼女はキッ!っとにらみかえし、おかえしの平手をしようとしたが、呆気無く腕をとられた。

女A  「いい根性してんな、お前!
    こんな細い腕しやがって。そんなん当たるか!」

 そう言って女は彼女を突き飛ばした。 彼女は壁にあたって、その場にひざまずいた。

女A  「那須さんに楯突いて、どうなるか
    分かってンだろうな?
     明日の放課後、体育館の裏に来い。
    那須さんが待ってる。
    覚悟しとけよ! ふん!」

 女達は彼女をにらみつけながら去って行った。
と、そのうちの一人が振り返って言った。

女C  「お、こいつ、いい時計持ってんじゃん。
    ちょっと古いけど、高そうだな。」
彼女  「あ、ちょっと。それは!」
女A  「んじゃ〜。これ、あずかっとくよ。
    明日の約束の担保ってことで。」
彼女  「返して!
    それは、あたしのじゃなくて
    預かりものなんです! ホントに!」
女A  「だめだな!!
    ハハハハハ!
     安心しな、ちゃんと返す。 約束通り来たら。
    んじゃ。明日!」

かずお 「おいおい!
    その時計、オレんじゃね〜の?」

 かずおは去って行く女達に、物陰に隠れながら小さな声で言った。

 

この日記に登場する人物、団体、事件等は、すべて架空のものです。
なお【00年00月00日】とは作者の書いた日付けで、
作品中の日付けとは関係ありません。

 

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